ヒラエッセイ

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2000年5月16日(火) 首相代行。ことの真相は?

 僕は風邪をひいて、会社を休んだ。
 会社を休むとついつい昼間に酒を飲みたくなってきて、僕は焼酎缶を一本あけた。すると、あっという間に睡魔が襲ってきて、僕はソファに座ったまま、眠りについてしまった。
 完璧に寝る体勢でないときの居眠りというのは、実に心地よい。電車の中、車の中、授業中、会議中。どういうわけかああいうシチュエーションでの不完全な眠りには、布団で寝ているのとは違う心地よさというのがあるものだ。
 あれはつまり、まだ意識が残っていて、眠るという気持ちいい行為をしている自分を自分で確認できるからではないかと僕は思う。
 そして僕は、そんなまどろみの中で夢を見たのだ。
 夢には、おじゃ魔女ドレミ♯にでてくるマジョリカそっくりの、野中自民党幹事長が出てきた。

「野中さん、小渕首相は本当に『万事任せる』って言ったんですか?」
「直接聞いたわけじゃないが、あれはね、小渕さんがバンジージャンプの夢を見ていたらしくてね」
「あの、高いところから飛び降りる奴ですか?」
「まあ、死のふちにいるとき、人間はそんな夢を見るんだろう。それで、俺は飛びたくないから、バンジーは君に任せる。バンジー任せる、万事任せるって・・・・・・」
「つまんないですね、それ」
「あ、そう? でもあの場合、そんなことはあまり問題ないんじゃないの?」
「なんでです?」
「だってね、もしちゃんと話せたとしてだよ、『万事お任せください』っていったら、『うん、任せる』ってだれだっていうだろ。『やだ! やだ! 僕が治るまで待つんだ!』って言わんだろ、ガキじゃないんだから」
「言わないですね。言ったら、おかしいです」
「だろ。だから、どうだっていいじゃないか」
「それもそうですね。ところで幹事長、小渕さんの死についてインタビューされたとき、泣いてましたね?」
「泣いた」
「国会で鳩山さんのお見舞いの言葉を『白々しい』って言いましたけど、あの涙のほうがよほど白々しくないですか? 普通、いい年のおじさんは職場の同僚が亡くなっても泣きませんよ。そんなの若い女子社員だけですよ」
「そりゃそうだ。あれはうそ泣きだ」
「やっぱり」
「長く芝居をやっているとどうも自然に涙がな・・・・・・」
「あなた、政治家でしょう?」
「政治家ってのは特殊分野の役者でね。政治はお芝居だから。だからほら、レーガンなんていい大統領だったろ?」
「あーなるほど。彼は俳優出身ですもんね」
「それで勘違いしちゃったのが横山ノックだな。芝居とと漫才は違うんだよ」
「なるほど。ところで、亡くなったとたんに皆さん誉めはじめましたね、小渕さんを」
「そりゃそうだ。死人をけなしてみろ、『死者にムチ打った』って批判されるだろ。それと逆に、死人はどんなに誉めても持ち上げても絶対に起き上がってこない。生きてる奴を誉めるとそいつの評判が上がって力を持ってしまうけど、死人は大丈夫。だから、どんなに褒め称えても邪魔にならない。おまけにだな、他人を誉める人間というのは実に美しく見えるんだな」
「まぁ、悪口言う人よりずっと気持ちいいですね」
「そうだろ。ずごーーくいい人に見える」
「見えますね」
「だからみんな、一生懸命誉めて、自分をかっこよくするわけだ。なにしろ、政治家は24時間選挙モードじゃないといかん」
「小渕前総理は、良い人でしたか?」
「良い人だったね。すばらしい人だ。あんなすばらしい人はいない!」
「誉めてますねぇ。しかしですね、日本の政界はいい人が総理大臣になれるという構造にあるんですか?」
「あるわけないだろ。そんな甘いもんじゃないよ。あるときには他人を蹴飛ばし、陥れ、自分だけは這い上がるというくらいじゃないとね。『バンジー任せる』っていうのなんか、そういう心の表れだな。がけから落ちそうになったら他人を犠牲にしてでも自分が助かる。こういう根性が政治家の基本だ」
「じゃ、精錬潔白な政治家じゃ、だめですか?」
「無理だろう。何年たったって森田健作はずっと『俺は男だ』じゃないか。もらうときはもらう。出すときは出す。こういうタイミングの疎い奴はだめだな」
「ほう。すると小渕さんは?」
「実に・・・・・・実に善人を絵に書いたような人だった・・・・・・(涙)」
「じゃ善人でも、総理大臣になれるんですねぇ?」
「なれるわけないだろ。そんな甘くないよ、君」
「じゃ、小渕さんはどんな人だったんです?」
「政治に対し前向きで、私利私欲のかけらもない、いいひとでした(涙)」
「矛盾してるなぁ。でも、庶民的だったみたいですね、小渕さんは」
「なんでだ?」
「だって、テレビでこの上なく汚い焼肉屋が出てて、そこに小渕さんがよく来ていたって、焼肉屋のご主人が話してましたよ」
「いるんだよ、2,3回行くとよく『お得意様です』とか言う奴。ほら、芸能人と一度なにかで同席すると、『ああ、あいつね。俺知ってるよ。この間あいつと話したときさぁ〜』なんていう奴いるじゃないか。俺もよく、『野中にこうアドバイスしたんだよ』なんて金払えば誰でも出席できるパーティーにきて、俺の横で勝手に演説ぶってる酔っ払いに言われているらしい。それにしてもそのテレビも臭いインタビューするもんだな」
「臭いですか?」
「汚い店で焼肉を食べたから、庶民的でいい人なんだというストーリーなるだろ。臭すぎるな。生きているうちはけなすけど、死んだらたたえる。テレビ局もわれわれと同じ感覚だな。それに、わざわざそんなきたねー店に行くなんて、小渕さんも臭いね」
「ええ。でもご本人は『おれ、よく間違われるんだよ、小渕さんに』って、自分が小渕恵三であることは隠していたみたいですよ」
「と、否定しつつも店主と一緒に記念撮影していた。ちがうか?」
「あたりです」
「あの顔で他の誰だって言うんだよ、まったく」
「それもそうですねぇ・・・・・・」

 というわけで、今問題になっている「万事任せた」は、小渕さんの「バンジー任せた」といううわごとであったという新しい見解を僕としては提唱したいのである。

2000年5月17日(水) 普通の顔のレスラー死す

 ジャンボ鶴田さんが逝ってしまいまった。
 49歳ってことは、ぼくと10歳か違わない。なんだかずっと前からいたような気がして20歳くらい上なんだと思っていたから意外なのであった。
 我が家ではプロレスというのはご法度で、テレビでプロレス中継をテレビで見ることはほとんどなかった。だから、たまに誰も家にいないとき、こっそり見ることができたくらいなのだ。
「くだらん」
 の一言でプロレスのチャンネルはパス。たまにボクシングは見たけれど、これも母親が「野蛮だ」と騒ぐので、めったに見ることはなかった。
 プロレスがどうして「くだらん」のかというと、「インチキだから」なのである。
 K1やボクシングの本気で戦っている試合とプロレスの動きは明らかに違う。前者が常に顔面やボディーをガードしながらすばやく動くのに対して、プロレスは急所がら空き状態で相手にわざと攻撃させて、「うっ」とうずくまったまま、次の攻撃でやられるのを待っているのだ。もしもあれがK1だったら殺されている。
 しかも、えいやっとロープに飛ばされると、ご丁寧にもロープではねかえってやられに戻ってくるのだ。あれでどう考えてもインチキだとわかるのだけれど、プロレスファンは絶対にそれを認めないんだから、よくわからない人たちなのだ。
 変と言えば、プロレスラーの顔はだいたいにおいて変だった。アントニオ猪木の顔を見れば、ほほ骨は飛び出ているし、顎はやたらととがっている。口を開けば「なんだこのやろー」と「なんだ馬鹿野郎ー」しか言わないので、「荒井注と同じじゃねーか」と思った人も多いはずだ。
 ジャイアント馬場だってそうだった。あの人の顔はめちゃくちゃ長い。あの顔だけでスゴロクができるくらいの長さはあったし、ゴルフゲームなら18番ホールまで作れたかもしれないというくらいの顔だった。
 あの人の得意技は16文キックだ。要するに足袋のサイズでいうところの16文も足のサイズがある。あんな靴はビックサイズ専門の店に行ったって売っちゃいない。
 そのすげーでっかい足で蹴るから強いんだぞというわけなんだけど、あれは実はどう考えてもおかしい。
 しかるに、足がでかくて足の面積が大きいということは、蹴ったときのヒット率は高いとしても、単位面積あたりの力は弱くなるので、16文キックは痛くないはずなのである。それなのに、あれでみんなが倒れてしまうのは、ぷわっとあげた足の裏に「社長」ってかいてあるからだという話は前にも書いたとおりだ。
 両足で飛び蹴りをすると16と16を足して32文キックという単純かつ誰も死なないのに必殺技という変な技になっていた。
 ところが50をすぎるとジャイアント馬場は32文キックをやらなくなり、記者の「なぜ飛ばないんですか?」という質問に対して、「怪我をしたら大変だから」と答える大物ぶりを見せたのだ。
 あの顔を見て、「ジャイアント馬場はきっと頭が悪い」とみんなが思っていたら、雑誌の取材で、「僕は年に本を100冊読む。バカじゃプロレスはできないよ。パフパフパフ」と答えたのを見てみんなはびっくりしてしまった。
「バカじゃなかったんだ・・・・・・」
 と、だれもがジャイアント馬場を見直したのであったが、僕は子供心にも「内容を覚えているとはだれも言ってないなぁ」などと分析していたのであった。
 顔といえば、デストロイヤーというのもいたけれど、あれは覆面をしていたからどんな顔だかわからない。
 タイガージェットシンなんていうのもちょっと危ない顔だった。プロレスでは凶器を持ち出すことが多いけれど、タイガージェットシンの場合はサーベルだった。サーベルはつまり西洋刀なわけで、これで刺されたら死んでしまうという凄いものなのだけれど、タイガージェットシンはそのサーベルの柄で敵の頭をたたくのである。
「じゃ、サーベルなんて持ってこないで、柄だけもってこいよ」とどうして誰も言わないのだろうかと、僕は不思議でならなかったけど、学校の先生はその疑問には答えてはくれなかった。
 そしてそのあとでてきたのがジャンボ鶴田で、初めてまともな顔をしたレスラーだなぁと思った記憶がある。喋ってても普通だし、頭もよさそう。最後はアメリカの大学で客員教授だったというのだから、インテリだったわけだ。
 そんなジャンボ鶴田さんが亡くなったというニュースを聞くと、ついついK1の出現でどうでもよくなってしまったプロレスをまた見てみようかなと、僕は思うのであった。

2000年5月24日(水) ネカマの見分け方教えます

 みなさんは、ネカマという言葉をご存知だろうか。ネカマ。それは、ネットワークオカマの略なのだ。
 つまり、ネカマはネットワーク通信上で、女性のふりをしている男ということになるけれど、その本質は本当のオカマとは違う。
 本当のオカマのように女性になりきっているのとは違い、男が女のふりをして他の男をからかうという、言ってみればいたずらなのである。
 ネットワーク上で、文字だけのお付き合いでは、どうしても性別はわからない。だから、いまはやりのチャット(リアルタイムで文字だけのおしゃべりをする遊び)ではこのネカマが大量発生しているのである。
 しかし、どうしてネカマをやるのか、これは本人にしかわからない。たぶん他人にちやほやされる快感を味わいたいからなのではないだろうか。
 だから、ネカマはひっそりこっそりとやるのではなく、自分に回りの人たちをひきつけようとする特徴があるのだ。
「こんにちは、カッパ64です」
「こんにちは、ひらりーまんです。はじめましてカッパ64さん」
「わたしはくずの助ともうします。よろしく」
「どもども、くずの助さん」
 こんな調子で始まるチャット。チャットでは本当の名前を使う人もいるが、ハンドルネームという自分で勝手につけた名前を使っているのが普通だ。しかしそれでも女の子の名前を男が使うことはしない。それをやるのがネカマなのだ。
 上の会話の場合、カッパ64やくずの助が「私は女性です」と言っても、信じてよい。しかし・・・・・・。
「こんにちは、ひらりーまんです」
「こんにちわ♪ わたしぃ〜20歳の女子大生でーす! 名前はのぞみでーす♪」
 この場合、まず間違えなくこの「のぞみ」はネカマなのだ。
 ネカマにはそれを見分けるキーポイントがある。それは、次の3つなのである。

1.可愛い女性を想像するような名前を使う。
2.女の子っぽい言葉と内容を話す。
3.やたらとピンク色の文字などを使いたがる。

 つまり、自分がうら若き女性であることをやたらとアピールしたがるという特徴が見られるのだ。
 それをアピールすることで回りの男たちがどぎまぎするそれが楽しいのだから当然だ。なにもネカマになってまで色気も華やかさもなく、男でも女でもいいような女を演じる意味などない。だから、なるべくかわいこちゃんだったり、周りの男を魅了する女を演じるという特徴があるのだ。
 ネカマにでれでれ鼻の下を伸ばしてお話などしたら、おじさんとしては恥と心得なくてはいけない。決してネカマにだまされないよう、注意すべきなのである。

「こんにちは、ヒラリーマンさん。ひとみと申します。どうぞよろしく! いい天気ですね」
「ひとみさん。ほんと、いい天気ですね」
 ひとみなんていういかにもかわいらしい名前は、まずは疑わなくてはいけない。
「ヒラリーマンさんは、会社からですか? わたしは柔道で腰を痛めましてね、今日は休んでいるんですよ」
 しかし、こうなると絶対にひとみちゃんはネカマじゃない。柔道をやっているなんてオカチメンコを想像させるようなことをネカマは決していわないからなのだ。こうなったらおじさんはもうデレデレとして、にやけてしまっていいのである。
「ほー、ひとみさんは柔道やってるんですかぁ? いいですねぇ、武道はいいです。僕は空手でしてね特にカタが得意なんです。上司にもいつも言われるんですよ、『おめーはいつも空手形だな』なんつってなんつって。で、ひとみさんおいくつです?」
「はい、30です」
「いやーー、いろっぽいお年頃。女は30からです。ええ、そうですとも。うひひひひ。んじゃま、今度柔道を教えてくださいな。寝技なんてとくに・・・・・・でへへへへへ〜」
「あのー、なんか勘違いされているようですね」
「へ?」
「僕は人見健一っていいまして、男なんですが・・・・・・」
 ゲロっ。

「可愛い女の子を演出したら、ネカマと思え!」
 これはチャットの基本なのである。

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