ヒラエッセイ

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2000年3月23日(木) 女子社員の社内恋愛法

 女子社員の社内恋愛の基本中の基本は、「ばれないこと」である。
「あのね、あたしはなにも不倫をしようって言うんじゃないのよ。純な恋愛をしたいの。経理課の達川さん、すてきなのよ。達川さんもあたしも独身。だから、ばれたってなにも問題ないじゃないの。変な邪推しないでよ!」
 なんて怒っちゃいけない。
 社内恋愛は不倫だろうが、遊びだろうが、真剣だろうが、結婚を前提に考えていようがそんなことは関係なく、社内恋愛は「ひみつ」が原則なのである。
「例えば由美子さん。君、達川君にふられるかも知れないでしょ。2人の交際を公にしていたら、振られたのもバレちゃうわけでしょ」
「そ、それがなんだっていうのよ!」
 わかっちゃいない由美子ちゃん。
 世の中職場結婚というのは非常に多くて、それを「世間が狭い」なんて言う人もいるけれど、実はそんなことはない。
「祇園祭で知り合ったの」なんて言うとロマンチックな出会いのように感じるけれど、よくよく考えてみればタダのナンパ。
 そんな行き当たりばったりの出会いよりも、長い間じっくり相手の性格を観察できる職場恋愛の方が、ふさわしい結婚相手を見つけるという点では優れているとも言える。だから、わざわざ最大の出合いの場所である職場での恋愛を放棄することはない。
 それに、職場結婚をするのはなにもサラリーマンだけじゃない。病院では医者と看護婦、学校では先生同士、芸能人だってドラマの共演者という具合に、あちこちで行われている普通のことなのだ。
「由美子ちゃんのご両親だって、刑務所で知り合った職場結婚でしょ?」
「ちょっと、あんた。その言い方やめてよね」
 ちなみに彼女のご両親は刑務官なのだ。
 さて、こう考えるとなると職場結婚というのはあながち悪いものじゃない。結婚のチャンスとして職場はもっとも理想的な舞台なのだ。
 ところがほんのお遊びで社内恋愛していたのが破局して、それがバレたりするとさあ大変。その後「社内結婚」のチャンスが極めて少なくなるのである。
 一昔前は「処女」というのが非常に重視され、かわいこちゃんアイドルタレントなんて絶対に処女じゃなくてはいけなかった。本当に処女だったのか実はあそこが真っ黒になるほどのヤリマンだったのかは知らないけれど、とにかく名目上は「男性とおつき合いなんて、したことないです。トーゼンです」ということになっていて、男女交際が発覚して別れちゃったなんてことになったら、それでもうタレント生命は終わりだったのである。
 ところが今は、
「人気アイドル○○子、ロックシンガー××との同棲生活にピリオッド」
 なんてことを週刊誌に書かれてもそのままアイドルでいられるし、子供を産んでもアイドルのまま。
 同棲したり子供を産んだ奴が処女のわけはないのだから、つまり処女かどうかなんてことはどうでもよくなっちゃったのである。
 こういう感覚というのは芸能界だけじゃなくて世間一般の感覚だから、当然普通の花嫁も特に処女であることを要求されることはほとんどなくなったといってよい。
 しかしOL諸君、それで安心して安心して社内恋愛を大っぴらにバコバコやってはいけないのだ。
 例えば君たちは今、オツボネ様がくさーいウンコをして出てきたばかりの便所の個室に入り、ぬくもりが残った便座に座ることができるだろうか?
 個室からオツボネ様がすっきりした顔で出ていったあとに、さっきまでオツボネ様のオケツがのっかっていた便器のU字部分に、おのれのお尻を気持ちよく着地させることができるだろうか。
 これは絶対に嫌なはずだ。きっと隣の個室に行くはずなのだ。
 ところが、使用中だった個室の順番を待ちながら髪などセットしていて、ふと振り返ると空いていたという場合。この場合はぜんぜん平気なものだ。
 どうせこの便所は新品じゃないのは分かり切っているので、潔癖性でもない限り大丈夫なのである。
 つまり、自分が良く知っているあの人のあのケツが今さっきまで乗っていたという具体的な事実を突きつけられると、人間はなぜか「いやだなぁ」と思うけれど、そうでなければ大丈夫ということなのである。
「ウンコと社内恋愛に、どんな関係があるって言うのよ!」
「つまりね、由美子ちゃんは処女じゃないでしょ。もう28歳だもんね。処女のわけないよね」
「ノ、ノーコメントよ」
 まぁその、便器と一緒にするのもなんなんだけど、例えば由美子ちゃんが処女のわけないわかているとしても、今じゃそんなことは恋愛の障害にはならない。
 ところが、具体的に「お相手は販売課の坂口君でーす」ということになると、そうはいかなくなるのである。
 オツボネ様が座っていた便器と同じく、具体的な情報が必要以上に状況を赤裸々に表現してしまうのだ。
「す、すると、坂口の右に曲がった変形チンポコが、由美子ちゃんの……。うわぁーーっ、俺はやだぁーー、坂口のあとはいやだーーっ!」
 と、こうなるのだ。
 だいたい、社内結婚した自分の奥さんのマル秘部分を、「こんな形でーす」と同僚や先輩が知っているというのはどうにも気分が悪いじゃないか。
 というわけで、社内の誰かとつき合っていてそれでしばらくして別れたなんて言う情報が社内で明らかになるというのは、結婚相手としてはパスしたくなるという、そういう気持ちを男に抱かせる結果となりうるというわけだ。
 そういうわけで、真剣だろうが遊びだろうが、とにかく社内恋愛において女性諸君はベラベラとそのことを喋ってはいけないのである。わかった?

「そんなうまいこと言って。愛場さんたら、あたしにそういうこと教育しておいて、口が堅くて都合のいい不倫相手にするつもりじゃないの?」
 う……。

サラリーマンの第1手。
「社内恋愛は極秘に限る」

2000年3月24日(金) 男子社員の社内恋愛法

 男子社員の社内恋愛の基本中の基本は、「バレないこと」である。
「おいこら。女子社員と同じじゃないか!」
 なんて怒っちゃいけない。これは、男女を問わない基本なのだから。
 さっき由美子ちゃんに「喋っちゃいけない」と僕は言った。しつこいくらいに言った。あれだけ言っておけば、いくらアンポンタンの由美子ちゃんでもわかるだろうと言うくらい言ったのだ。
 しかし、由美子ちゃんは手を出してはいけない。彼女は社内恋愛の対象にしてはいけないのである。
「へ、なんで? 若いし、美人だし、ナイスバディーだし、文句ないじゃないの」
 いいや、だめ。あれはやめなさい。
 あれだけしつこく言っても、あの女は喋る。ベラベラと喋る。そういう性分なのである。
 それが「彼氏ができちゃってぇ……」なんていうおめでたい話じゃなくて、自分が誰かに言い寄られたりするとすぐに喋るタイプの女なのだ。
 ああいう女はシャブ中と同じで、喋ることを我慢すると体が震えて来ちゃうらしい。
「絶対にナイショ」なんて約束でもしようものなら、逆に喋りたくて喋りたくてたまらなくなって、我慢すると禁断症状が出てしまうのだ。
 そしてやっぱり我慢しきれなくなってまずは親友にこう話しかける。
「これってぇ、絶対に誰にも言わないでね。純子を親友だと思って言うんだけどぅ、絶対にナイショだよ。あのね、あたし……やっぱりやめた」
「ちょっとなによ、由美子。途中でやめることないじゃないの。あなた、あたしが信用できないの?」
「そうじゃないけどぅ……」
「じゃ、言いなさいよ、親友でしょ?」
「うん。それじゃ……。実はあたし、松村君に『つきあってくれ』って、言われたの」
「うっそーーっ!」
「誰にも言わないでよ」
「もちろんよ」
 というやりとりがあって、一週間経ったら社内中みんなが知っているという、そういうことになるのだ。

 男の場合、例えば女性とつき合っていることを黙っていられなくて喋る奴はいる。
「実はオレよぅ、陽子とつき合ってんだよ、へへへ」
 つき合っていることがうれしくてついついという、かわいいものなのだ。
 ところがお喋り女は違う。
「ねぇ、頼子。あたしさぁ、相談があるんだ」
「え、なーに?」
「あのねぇ、実は富田林君に、交際してくれって申し込まれたの。どうしよう」
「うっそぅー、やっだぁーーっ、ほんと?」
「うん。昨日ね。なんだかさ、いきなり真剣な顔しちゃってさ」
「そうなんだぁ」
「どうしたらいいと思う?」
「真澄は、富田林君のこと、どうなの?」
「あたし、苦手なのよ、ああいうタラコくちびる。気味悪いじゃない。はっきり言って、嫌いなんだ、彼」
 相談もクソも、最初から結論は出ているのだ。それなのに、「相談」と称して自分がモテたことをベラベラ喋りまくる。
「そ、そんな。社内恋愛での告白といえばそれなりのリスクがあって、それでも誠意を持って臨んでいるんですよ。それを彼女がわかっていないはずはないでしょう。そんなまさか……」
「チッチッチ。甘いなぁ」
「あんた、宍戸錠ですか」
 お喋り女ってのはそれだから怖い。こっちが真剣だろうがなんだろうが、「相談があるの」といって喋りまくる動物なのだ。
 喋るためには誰が傷ついても全然構わない。それは「相談」だから仕方がないのである。
 
 とはいうものの、男の場合は「3人までOK」というのが実は一般的なのだ。
 何が3人までかというと、3人までは社内でつき合っても大丈夫ということだ。
 これが4人目に行くと「歩く生殖器」とか「全身チンポ」なんてあだ名が付いちゃって、「あの人、片っ端から口説いているのよ」なんて具合に社内のOLには相手にされなくなること間違えなしなのである。
 ただし、フラれてから次に行くのはよろしくない。女性は他の女にフラれた男が求愛して来ても、話にはのってこないものだ。あっちでフラれたからこっちにきたのね、なんていう恋愛漂流者として扱われて、「あんた、だれでもいいのね」と女性のプライドを傷つけてしまいかねないのである。
 男が女を乗り換えようとしたとき、求愛された女性はとりあえず「だってぇ、○○ちゃんに悪いしぃ」なんて言うけれど、これは嘘っぱちである。
「○○ちゃんよりもあたしのほうがいい女なのだ」という勝利した気分がどこかにあって、気分がいいのだ。
 とにかく、フッた話をばらまくような、そんな女にアプローチすることは絶対にタブーなのである。

サラリーマンの第2手。
「おしゃべり女に手を出すな」

2000年3月29日(水) 最近思うこと

 もうちょっと古い話になるけど、どうして横山ノックがエッチなことをして、そんなにみなさんはあんなに驚ろいたのだろう。
 いまさらながらに疑問である。
 あれは、知事がエッチなことをしたんじゃなくて、エッチな人をみんなで知事にしただけなんだから、騒ぐほうがおかしい。横山ノックがエッチなことをするのは普通なのに、その人を知事にしちゃったんだから、いまさら何を言うかという感じ。
「やっぱりやりましたね、ノックさん」。これが正しい反応でしょう。

 話はかわるけど、最近コマーシャルを見ていると、
「多い日も安心。薄型スリム」
 なんていうのがある。いつのまにか、ナプキンやらタンポンが堂々とコマーシャルに登場する時代になってしまったですね。
 僕が高校生のころは「タンポン」なんていう言葉はとても恥ずかしくて言えなくて、でも言ってみたいからわざわざ歌を歌って、
「かーさんお肩をたたきましょ〜♪、タンポンタンポンタンポンポン♪」
 なんてやってたのになぁ。やらなかった?
「いつ煮える? まだ煮えない? もう煮える? エマニエル!」
 なんて。踊りを踊りながらやっと「エマニエル」と発音してみる。「エマニエル夫人」ということばも恥ずかしくて言えなかったもんね。
 それにしてもあのナプキンのコマーシャル、どうしてあのデモンストレーションでは青い液体を使うのだろうか。
 あれは小便漏らしの対策用具なのだろうか。
 そんなことはないはずだ。
 なぜ、真っ赤な液体でやらないんだ!

 コマーシャルといえば、
「わたしたちのデリケートなところのかゆみが自分で治せるんです!」
 こんなコマーシャルもやっている。
 あのコマーシャルを見て多くの男性は思ったはずだ。
「あんな薬が出るほど、世の中にはおまたの痒くなる女性がいるのか? みんな痒くなるの? ほんと? しらなかったなぁ〜。俺がかいてやろーか?」
 そう。これは今でも疑問。
「あんなところ、そんなに痒くなるものなのかなぁ? それにしてはパンツに手を突っ込んでボリボリかいている女なんて、見たことないぞ!」
 そうだ。女もおばさんになれば人前で鼻くそもほじるし屁もこくけど、そんなところをボリボリかいているのは見たことがない。
 それからついでに僕はこう思ったのであった。
「『わたしたちのデリケートなところ』なんて言葉を濁すな。ものははっきり言いなさい。はっきり言え、はっきり!」
 しかしその場合、それは関東4文字にするか、関西3文字にするか、はまたまた九州2文字がいいか、東北4文字にすべきかの議論になるかもしれない。僕としてはそんな話し合いをしているコマーシャルの企画会議にぜひとも僕は参加したいのである。

 テレビといえば、ニュースで色々やってますなぁ、最近。
 埼玉のどこかの社長が偽装結婚&保険金殺人とかで逮捕されたとかね。
 あまり興味のある事件じゃないからまじめに聞いていないので、事の詳細はしらないけど。
 しかしあの社長さん、昔、三浦なんとかというロス疑惑で逮捕されちゃったおじさんを彷彿させるようなおしゃべり容疑者ですねぇ。
 報道陣を集めてぺらぺらと絶好調で、自分の顔を隠したがる一般的な犯罪者とはかなり違う精神構造をしている。
 しかし、僕がこの件で最も感じる点はこれではない。僕が注目しているのは、「犯罪の容疑をかけられている男が、報道陣を集めて有料でインタビューに応じている」という点なのである。
 一人6千円だから、たぶん一回で20万円くらいにはなるだろう。10回で200万、100回で2000万。裁判の費用にあてたいのだろうか。
 そして、
「なんと、一人6千円もの取材費をとり、報道陣の質問を受けているのです」
 と、新聞もテレビも雑誌も、必ずどこかでこのことを批判しているのである。
 これが問題なんだなぁ。
「報道陣の君たち。君たちはアホか? 他人の所に『おまえ、犯人だろう?』という取材をしに押しかけ、他人様の時間を束縛し、あれこれと話しを聞いて、『やっぱりこいつは怪しい』という記事を書くのに、その情報料がタダだと思うほうがどうかしている。たった6千円ぽっちの請求がとんでもないみたいにいうなんて、おたくらどっかおかしいんじゃないの? そんな感覚だから家族が事故死したひとのところに行って、『今どんなお気持ちですか?』なんてまぬけな質問が平気でできるんだな。記事書いて金を儲けるんでしょ? そのネタで商売しているんでしょ? それなら取材費くらい黙って払ったらどう? 6千円払ってでも取材したいからしてるんでしょ? その価値があると判断したから払うんだよね? 6千円の価値があるとは思うけど、それでも払いたくないというのは、これはあーた、万引きの感覚だぞ、そりゃ!」
 というわけで、どうも報道取材というのは、「情報の万引き」をしているのではないかと僕は思うのであります。

 ニュースといえば、警察の不祥事が話題になってますね。
「警察の不祥事。交通違反のもみ消し・・・・・・」
 おーい、こんなことしてもらったやつ、僕の知り合いにたくさんいるぞーー!
 こんなのみんな捕まえたら、警官はみんないなくなっちゃうぞーー!
 新潟の場合、やっぱりマージャンっていうのはイメージが悪かったのかなぁ。あれがマージャンじゃなくて、「博物館を見学していた」ということになると、ぜんぜん扱いが違ったかも。
 ま、とにかく皆さんは「警察がこんなに不祥事を起こしている! いったいいまどきの警察はどうなっているんだ」とお怒りのようですが、僕としては、「あんなにたくさん警察官がいるのに、たったこれしか不祥事がないなんて、すごいぞ!」と思っているわけです。
 僕の知り合いで警察官になったひとのほとんどは、中学・高校とかなり成績の悪い人たちで、ほとんどが不良。結構頭が悪くても警察官にはなれちゃうのね。
 高校を卒業したとき、ついこの間まで暴走族だったやつが警官になってた。1年間の警察学校での生活を経て、そのもと暴走族が腰にピストルをぶら下げているのを見て僕は、
「おいおい、大丈夫なのか?」
 と心配したわけです。
 何かの拍子に1年前の感覚に戻って、人様の足のつま先から頭のてっぺんまでを視線で上下しながら肩をゆすってちかづき、
「やいやいやい、てめー、なにガンたれてんだよ!」
 てな調子でバカボンに出てくるおまわりさんのようにピストルをバンバン撃ちだしたらどうするのだろうかと、危惧したわけですねー。
 こういった、ちょいと前までツッパリにーちゃんだった連中がうじゃうじゃ集まっている警察で、たったあれしか不祥事がないというのは、それこそびっくりするほどのことではないかと僕は思うのだ。
 それから、「最近の不祥事」と言っているのは最近はじめて起こしたわけじゃなくて、ずっと前からちょいちょいやっていた程度のことがばれてきて、それが騒ぎになるとまた内部告発したりするやつが出てきて、これがまたまた騒ぎになっているという、それだけのことじゃないのだろうかと、僕は思う。
 そのうち、署長室でエロ画像を見ていた警察署長が懲戒免職になったりするんだろうなぁ〜。
 あーやだやだ。

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